問題点・課題
Problems/issues
過去のマンション総合調査によると、調査対象管理組合のうち、取り換え時期とされる築後40年~50年のマンションにおいては、給水管も排水管も全体の約20%ほどしか交換できていない実態となっています。
そもそも、この程度の経年のマンションにおいては、長期修繕計画での計画工事への理解がないままに運営がなされてきてしまっているという現実もありますので仕方ないとの見方もできます。
マンションの配管の所有区分としまして、共用部分と専有部分に区分されます。また、上階部屋の配管が、下階との間のスラブコンクリートより下に配置されている場合など、配置はさまざまであり、図に示されるように、専有配管と共用配管に分けられます。
出典:国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン
一般的には、専有部配管は所有者にて保守、補修することになります。配管自体、多くは床下の見えない箇所にあるため、状態もみることもできないため自分の所有物という感覚にはなれない、との声を聞きます。
しかしながら、これが盲点となることは想像に難くありません。マンションという階層構造においては、専有部配管から漏水したときに下階の他の所有者の財産を汚してしまうことになることを考えれば、何等かの対応が必要になります。また、漏水してしまったら、その時に補修し、下階の方へは謝罪すれば済む、なんて考える人も一定数はいることかも知れません。
専有部配管からの漏水への備え
配管は劣化します。その配管の劣化により漏水が生じたときの被害を想定すれば、事前に何等かの備えが必要となります。ハード面とソフト面から観ていきます。
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まずはハード面ですが、配管自体を予防保全の観点から交換(更新)することが考えられます。
他にも、更生などの方法も考えられます。当該交換費用の負担は、所有者にかかってきます。
決して安い金額ではないため、計画的に貯蓄し、現状の配管の状態または、適正時期を見据えて交換する必要があります。
これは1つの住戸に限った話ではなく、全ての住戸における話として合意形成を図っておくことで、マンション全体の安心、安全、快適な生活が保たれることになるでしょう。
しかし、その先の現実として、専有部配管の交換を各所有者の判断に委ねてしまうと、まだまだ取り替えなくていい、漏水したとき補修すればいい、など統一性がなく、また交換してもらえる保証もないため、常に漏水の危機にさらされた状態での生活が強いられます。ひとたび漏水が発生し、他の住戸や共用部分に被害が生じたときには賠償などの話にもなりかねません。
このような状況を良しとすることはできるはずもなく、そこで、国は、標準管理規約に所定の施策を示し、 管理組合の計画工事に位置付けることにより管理組合の費用で一斉に専有部配管を交換できる仕組みを可能性として確立しています。
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次にソフト面ですが、専有部配管の経年劣化が原因による漏水に備え、保証対象となる保険に加入している必要があります。漏水被害にあわれた方のことを思えば、尚のこと加入は必要です。
基本的には、個人で加入します。火災保険や、自動車保険、クレジットカードなど広く個人賠償責任補償特約が付保できることから、加入していない場合には早期の検討が必要です。
また、配水管の交換費用と考えを同じくした場合には、保険加入を個人の判断に委ねてしまった場合には、加入しない方もいるかも知れません。
そこで、マンションで加入する共用部の保険の1つの特約として個人賠償責任補償特約を付保することができ、そうなれば、保険対象としてお住まいの方等に広く適用されますので、安心が得られます。
今一度、皆様のマンションにおける状況を確認してみてください。